画面にノイズが乗るようになったノートパソコンの修理


はじめに

 リビングで使用しているノートパソコンの画面がノイズだらけになってしまいました。機種はエプソンのEndeavor NT9000proで、6年前のものです。当時としてはノートPCとはいえ、nVidia GeForce Go 6600搭載、15.4インチWUXGA(1920x1200)の高精細液晶など、かなりの重装備マシンでした。
 全般に、ノートPCでも高性能グラフィックスを搭載しているものは、発熱が大きいせいか、グラフィックスのトラブルでお亡くなりになることが多いようです。我が家のEndeavorも例に漏れず、3年前くらいから画面表示が出たり消えたりといった症状を呈していたのですが、半年前に、とうとう画面がノイズだらけになるという症状に陥ってしまいました。原因はいろいろあるようですが、その中のひとつに、半田クラックによる接触不良があります。特にCPUやグラフィックスチップは発熱量が大きいため、未使用時の室温から、使用時の60~70度まで、高温・低温の状態を繰り返す、いわゆる『ヒートショック』にさらされることになり、半田クラック等の接触不良が起こりやすいようです。
 原因は単なる接触不良ですから、半田付けしなおしてやれば生き返るはずです。問題は、最近の集積回路は多ピン化が進み、CPU・GPUは例外なくBGA(Ball Grid Array:チップ底面全体に端子が配置されたパッケージ)になっており、手作業で半田付けすることが出来ないということです。
 BGAチップに限らず、最近の高密度実装された基板は、リフローという手法で半田付けされます。リフローとは、要するにオーブンで焼く手法のことです。基板のパッド(部品が載る銅箔面)にクリーム半田を塗り、部品を置いて加熱して半田付けします。部品をパッドに乗せたり、クリーム半田を塗布するには専用の装置が必要ですが、焼いて溶かす程度ならアマチュアでも出来ないわけではありません。ネットを調べてみると、PCに同様の症状が出て、自分で修理をしている人が意外に多いことがわかりました。ということで、早速試してみることにしました。

リフローの条件

 全ての電子部品は耐えることのできる温度と時間が仕様として提示されているので、その範囲内で過熱してやればいいのですが、実際に部品を基板に搭載してしっかりと半田付けするにはどの程度の温度と時間、オーブンで過熱してやればいいのかは、基板の材質や厚さ・配線パターン、内層の構成、使用する半田の仕様、搭載部品の仕様などで変わってきます。当然、アマチュアが仕様もわからないグラフィックボードを正確な条件でリフローできるはずもありません。でもまぁ、先人達がいろいろな試行錯誤をした結果がネット上に転がっていますので、その内容を見て、自分なりにトライして見ることにします。
 ネット上でよく見かけた条件が、『240℃・90秒』というものです。恐らく、電子部品のスペックからきたリフロー条件なのだと思います。しかし、中には、『3分くらい、がっつり焼いたほうがいい』という記述も見られます。今回は、『240℃・120秒』で行ってみることにします。

再リフロー工程の記録

【写真01】ノートパソコンの画面。ノイズだらけで何が表示されているかわかりません。


【写真02】同じくWindows XP起動中の画面。


【写真03】ログイン画面。システムがGraphic Controllerの不具合を検出したのか、VGA画面になっています。わかるかな?


【写真04】グラフィックボードを取り出す。底面カバーを開けると、右側にCPU、中央にチップセット&GPUがあります。その上に冷却Fanが。


【写真05】上がチップセット、下がGeForce Go 6600です。GPUの上にビデオメモリが乗っかった構造。GPUは別基板になっています。コネクタはミニPCIeかな?


【写真06】グラフィックボードを取り外したところ。


【写真07】これを、アルミホイルの上に乗せて、1980円のオーブンに放り込みます。普段トーストを焼くのに使っているので、パンくずが…


【写真08】このグラフィックボードは主要部品が上面だけなので、そのままオーブンに入れましたが、下面にコネクタがついていたり、部品が多く実装されているようであれば、部品が溶けて落ちないように工夫が必要でしょう。


【写真09】温度を240℃前後で一定になるようにオーブンの電源を入り切りしながら2分間待ちます。温度は以前から使用しているマルチテスター(秋月電子・MS8209)で計測します。


【写真10】再リフローが終了したら、少し時間をかけて冷やします。10分程度経ってから組み上げて、電源投入。おお、直ってる!!


【写真11】ログイン画面もWUXGAで表示されています。システムがグラフィックボードの不具合解消を認識しています。

感想

 今回は、グラフィックボードが取り外し可能な構成だったことから、比較的簡単に再リフローを行うことが出来ました。チップセット内蔵のグラフィックを使用しているノートPCや、AMDのFusion APUのようにCPUにGPUが統合されている場合は、マザーボードを再リフローする必要が出てくるので、難易度は極端に上昇します。このあたりは運ですね。
 また、電子部品は熱に弱いという先入観がありますが、熱に弱いのは動作時の話で、保存時や、製造時の短時間であれば、かなりの高温にも耐えてくれるようです。再リフローで十分に半田が溶けないと、結局また半田クラックが入って動作不良になってしまいますので、ある程度しっかりと熱を加えるほうが成功しやすいのではないでしょうか。
 なお、この実験はあくまで私的に行ったものです。電子回路、電子部品に詳しくない人が行うのはまず無理です。素直にメーカーの修理に出しましょう。また、電子回路に詳しいか否かにかかわらず、自分でやってみる場合は自己責任で。この記事は何かを保障するものではありません。
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